今回は、今やどの企業にも「設置義務」があると言っても過言ではない、ハラスメント防止措置、特に社内相談窓口の設置についてお話します。
なぜ今、「ハラスメント防止」が重視されているのか?
労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」が全面施行されたのは2022年4月ですが、2020年の大企業義務化から数えてもすでに5年が経過しようとしています。
現在は中小企業も対象となり、すべての事業者に対して「ハラスメント防止措置」が義務化されました。
ここでいう防止措置とは、単なる社内掲示や規則だけでは不十分です。
相談窓口の設置と適切な対応体制の構築、再発防止策の実施など、実際に運用可能な仕組みを整備する必要があります。
「義務化された防止措置」って、どこまでやればいいの?
👑厚生労働省が示すハラスメント防止措置は、大きく分けて以下の6項目です。
1. 方針の明確化と周知・啓発
→ 就業規則や社内ポリシーで「ハラスメントは許さない」方針を明記し、全従業員に知らせること。
2. 相談体制の整備
→ 社内または外部に相談窓口を設置し、誰でも安心して相談できる体制を作ること。
3. 事後対応のルール整備
→ 苦情・相談があった際、事実確認・関係者への対応・再発防止策の手順をあらかじめ決めておくこと。
4. プライバシー保護
→ 相談者・加害者双方のプライバシーが守られる仕組みを用意すること。
5. 不利益取扱いの禁止
→ 相談したことを理由に、異動・評価・解雇などの不利益な取扱いを行わないことを明示。
6. 必要に応じた見直し・改善
→ 制度や対応が機能しているか、定期的にチェックし、必要に応じて改善を行うこと。
とくに注目されるのが②「相談体制の整備」です。
相談窓口の設置義務とは?外部委託も可能?
労働局からの行政指導が増えているポイントが、「相談窓口の設置」です。
具体的には、以下のような点が問題とされることが多いです。
窓口が存在しているが、誰が担当なのか不明
担当者のハラスメント対応知識が乏しい
対応記録が残されていない
実際に相談しても、形だけで終わってしまう
社内で相談しにくい雰囲気がある
これを防ぐために、「実効性ある相談窓口」を社内外に設けることが求められています。
中でも最近は、第三者性・専門性の観点から外部相談窓口を活用する企業が急増しています。
当事務所でも、複数の企業様にて外部ハラスメント相談窓口サービスを提供しており、以下のようなメリットがあります。
社内では言い出しにくいケースも外部なら話しやすい
社労士による専門的な聞き取りとアドバイス
状況報告書や対応アドバイスが企業にフィードバックされる
法的な観点からの判断・予防策を講じやすい
外部委託により「客観性」「公平性」「安心感」が担保され、従業員の信頼性も高まります。
就業規則や社内体制との整合性はどうする?
相談窓口の設置にあたっては、社内規定と運用体制を一体で見直す必要があります。
▼必要な見直し項目の一例
ハラスメント防止規定の新設または改訂
就業規則への反映(懲戒事由など)
相談窓口の明示(外部窓口の場合は委託先情報も記載)
ハラスメント発生時のフロー図作成(事実確認~再発防止まで)
担当者研修・管理職研修の整備
特に中小企業では、「担当者=社長や総務担当」といった体制も多く、社内だけで対応するには限界があるケースもあります。
その場合は、外部リソースと連携しながら実効性ある運用を目指すことが重要です。
🚩「小規模事業所だから大丈夫」は通用しない時代に
2022年以降、都道府県労働局への相談件数は急増しています。
相談者の多くは「誰にも言えなかった」「内部で揉み消された」と感じた経験を持っており、企業名が記された行政指導の事例も増えています。
また、SNS等を通じて情報が拡散する時代において、対応の甘さが企業ブランドに傷をつけることも現実的なリスクです。
従業員数10名未満の小規模事業所であっても、法律の対象外ではありません。
「人数が少ないから顔を合わせにくい」という理由で、逆に深刻なトラブルに発展するケースもあるのです。
❓どんな相談が寄せられるのか?実例をご紹介
当事務所に実際に寄せられたご相談の一部をご紹介します(個人特定はできない形で編集済)。
管理職が特定の部下にだけ高圧的な態度を取る(パワハラ)
上司から容姿や私生活について不適切な発言(セクハラ)
職場のグループLINE内での仲間外れや陰口(いじめ・嫌がらせ)
育児休業明けに希望と異なる部署に配置転換(マタハラ・間接差別)
これらはすべて、きちんと初動対応をしていれば大事に至らなかった可能性があるものばかりです。
✏まとめ:企業が守るべき「信頼」と「安全」
ハラスメント対策とは、単なる法令遵守ではなく、企業が従業員に対して「安心して働ける環境を提供する」という信頼の証です。
特に中小企業においては、「うちは問題がないから大丈夫」と思っていたところに突如発覚するケースが多くあります。
だからこそ、相談窓口の設置と、実効性のある社内体制づくりが今、問われているのです。
💡(ご相談はこちらまで)
当事務所では、以下のようなサポートをご提供しています:
ハラスメント相談窓口の外部受託
ハラスメント防止規定の整備支援
就業規則の改訂と条文化
管理職向けのハラスメント研修
ハラスメント相談があった際の初動対応アドバイス
「うちにも相談窓口を作りたいけれど、何から始めれば…」というご相談も大歓迎です。
📞 お気軽にご相談ください。