職場のメンタルヘルス対策と休職制度の整備

今回は、近年ますます関心が高まっている「職場のメンタルヘルス対策」と、それに関連する「休職制度の整備」についてご案内させていただきます。🧠

従業員の心身の不調は、企業にとっても決して無関係ではなく、組織全体の生産性や雇用の安定に直結する重要なテーマです。

✏️ 1.なぜ今、職場のメンタルヘルスが重視されているのか

働き方の多様化、コミュニケーションの希薄化、経済環境の変動などにより、従業員の心身の不調を訴える声は年々増加傾向にあります。

厚生労働省の調査でも、「強いストレスを感じている」従業員は5割超というデータがあり、うつ病や適応障害などの精神疾患による休職者・退職者が大企業に限らず中小企業にも広がりを見せています。

こうした状況下において、企業側には、

✅ 従業員が安心して働き続けられる環境の整備

✅ 万が一メンタル不調が起きた際に柔軟に対応できる体制の構築

が求められています。

💡2.メンタルヘルス不調が企業に与える影響

企業にとっての影響は、単に「1人が休職する」という範囲を超えることが少なくありません。

★ 生産性の低下(プレゼンティーズム):出社はしていてもパフォーマンスが著しく落ちる状態

★ 職場内の雰囲気の悪化:周囲の従業員にも不安が波及する

★人手不足による業務停滞:特に中小企業では1人の欠員が大きく響く

★ 労務トラブルや損害賠償リスク:対応を誤ると法的責任が問われる場合も

こうしたリスクを最小限に抑えるためには、「メンタルヘルス対策の推進」と「就業規則上の休職制度整備」の両輪で取り組むことが非常に重要です。

📖3.企業が講じるべきメンタルヘルス対策のポイント

🔍(1)未然防止のための取り組み

ストレスチェック制度の実施

労働者50人以上の事業所では年1回の実施が義務付けられていますが、50人未満の企業も任意で導入可能です。

管理職へのメンタルヘルス教育

「ラインケア」の強化が鍵です。部下の変化に気づき、早期に対応できるよう研修の実施をおすすめします。

職場環境改善

業務量の偏りやコミュニケーション不足がないか、定期的な棚卸しが効果的です。

💬(2)早期発見・対応

面談や相談体制の整備

社内に「相談しやすい窓口」があることが、早期対応につながります。

産業医・社労士などの外部専門家の活用

メンタルヘルス不調の判断や復職判断など、医療的・法的な観点を要する場面では、専門職の関与が不可欠です。

🛠️4.「休職制度」の整備とポイント

職場でメンタルヘルス不調が生じた際、最も実務で問題になるのが「休職命令の基準」や「復職の条件」です。

就業規則での整備が不十分な場合、企業としての判断基準が不明瞭となり、トラブルの元となります。

【整備が必要な主なポイント】

🚨休職事由・・・・・・業務外傷病による欠勤が一定期間(例:連続3ヶ月)続いた場合など

⏳休職期間・・・・・・勤続年数に応じて6ヶ月〜1年、延長規定の有無も検討

💰休職中の取扱い・・・賃金・社会保険料の扱い、傷病手当金の申請支援など

👩‍⚕️復職の基準・・・・・医師の診断書+会社判断(業務遂行可能性の有無)

❌復職不可の場合・・・休職期間満了後の退職または自然退職の取扱い

🔧 補足:リハビリ勤務制度(試し出勤)の整備も効果的です。

💬5.実務上よくあるご相談

当事務所にも、以下のようなご相談が寄せられています:

「うつ病で欠勤中の社員に、復職を希望する診断書が出たが、職場で受け入れられるか不安」

「就業規則に休職期間が明記されておらず、復帰できない社員をいつまでも抱え続けている」

「復職直後に再発し、再度の休職を希望されたが、対応に迷っている」

「中小企業で、産業医もおらず、どのように対応したらよいか」

これらのケースでは、就業規則の不備や判断基準の不明確さが背景にあることが多く、結果的に会社・本人双方にとって不幸な結果になることがあります。

📋6.制度整備の第一歩として

まずは、現在の就業規則をご確認いただき、

休職に関する規定はあるか

対象期間や条件が曖昧でないか

復職時の判断基準はあるか

などをチェックしてみてください。

もし、上記のような点に不安がある場合は、ぜひ当事務所へご相談ください。現行の制度に合った見直しを、貴社の実態に即してご提案させていただきます。

🕊️7.最後に:メンタルヘルス対策は「攻めの人事戦略」へ

かつては「メンタルヘルス対策=防衛的施策」と考えられていましたが、現在では「社員が長く安心して働ける組織づくり」そのものが、人材確保・定着のための大きな武器となっています。

中小企業だからこそ、従業員一人ひとりの健康が組織の命運を左右します。メンタル不調を防ぐこと、そして起きたときに適切に対処する仕組みを整えることは、企業の未来への投資といえるでしょう。

当事務所では、就業規則の見直し、休職制度整備、社内研修の企画、外部相談窓口の構築など、幅広くサポートしております。📘

何か気になることがございましたら、どうぞお気軽にお声がけくださいませ。